2024年2月15日木曜日

2023年度調査の集計結果の一部


日頃は、名古屋大学が実施する、生活習慣病の予防に関する愛知職域コホート研究にご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。

2023年6月~7月にかけて実施いたしました、「病歴・生活習慣等に関するアンケート調査」には、ご多用中にもかかわらずご協力いただき、誠にありがとうございました。おかげさまで多くの皆様から大変貴重なご回答をいただくことができました。ご協力いただいた皆様に、心よりお礼申し上げます。

このたび、一部ではございますが、生活習慣等に関するアンケートの集計結果がでましたので、下記の通りご報告させていただきます。なお、今後の研究成果なども順次ホームページにてご報告させていただく予定です。

愛知職域コホート研究では、本調査結果をもとに、今後も働く世代を中心とした人々の健康の維持や、向上にお役に立てるような知見を得るため、尽力していく所存です。今後とも、ご協力賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

1. 生活習慣等に関するアンケート 回答者数
2. BMI(体重kg ÷ (身長m)2)平均値(自己申告の身長・体重より)


3. 現在の喫煙状況 年齢階級別

4. 現在の飲酒状況 年齢階級別


5. 食塩相当量摂取量(g/日)平均値 年齢階級別

2023年4月1日土曜日

愛知職域コホート研究について

この研究は、文部科学省科学研究費補助金(科研費)基盤研究(B):事業所健診成績の有効利用による脳・心血管事故の第一次予防-データベース作成とコホート内症例対照研究(豊嶋 英明、1997年度~2000年度)を得て、1997年(平成9年)に開始されました。その後も、継続的に科研費を受け、現在は科研費基盤研究(B):「コロナ禍での持病悪化要因と持病有無が就労関連要因の心血管発症リスクに及ぼす影響」によって主に継続されています。

研究の実施にあたっては、対象となった方個人から書面により、研究協力(アンケートの回答、健診成績の利用、健診時残余検体の保管と利用)に対するご意思(同意)の有無を確認しています。また、その後の生活習慣病の発症に関する追跡調査の方法と定期的な実施についても同時に説明してきております。研究への同意は、調査のたびに確認することとしており、また同意を撤回する方法についても周知しています。

倫理審査について
研究の方法、特に対象となった方に対する不利益がないか、個人情報の保護がしっかりとなされているか、研究目的と研究方法は妥当か等について、名古屋大学医学部倫理審査委員会の審査・承認を受けております。また、定期的(1年に1回)に研究の経過を倫理審査委員会を通して、大学院医学系研究科長に対して報告しております。
この研究の流れは下の図に示した通りです。



追跡調査について
生活習慣や検査結果と生活習慣病との関連を調べるためには、健康状態を長期にわたり把握していくことが必要です。具体的には、病気の発症を把握するために、定期的にアンケートによる調査を実施いたします。また、ご在職中に不幸にもお亡くなりになったり、休業あるいは休職されたりした場合には、詳細を確認させていただきます。さらに法律などで定められている正当な手続きのうえ、全国がん登録からの情報提供や人口動態死因照合による追跡調査を実施いたします。なお、結果の公表にあたっては個人名が同定されることは一切ありません。
 ご退職後の追跡調査について …… アンケートによるものも含め、追跡調査はご退職後も実施させていただきます。追跡は、20年間を予定していますが、研究計画が見直された場合には延長あるいは短縮される可能性があります

研究資金・利益相反について
上述の文部科学省(日本学術振興会)の科学研究費の他、厚生労働省の科学研究費、財団等からの助成金や寄附金、名古屋大学や藤田医科大学の研究費を使用して本研究は実施されます。研究における利益相反とは、研究者が企業等から経済的な利益(謝金、研究費、株式等)の提供を受け、その利益の存在により研究の結果に影響を及ぼす可能性がある状況のことをいいます。本研究における利益相反の管理は、名古屋大学大学院医学系研究科で行われます。

本研究に関するお問い合わせは、以下までお願いいたします。

名古屋大学大学院医学系研究科 国際保健医療学・公衆衛生学
466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65
電話 052-744-2127 Fax 052-744-2131
電子メール p-healthアットマークmed.nagoya-u.ac.jp (アットマークを@に変更して入力してください)

目次


愛知職域コホート研究から報告された論文の一覧

愛知職域コホート単独(自治体職員)
国内データ統合研究(自治体職員)
国際データ統合研究(自治体職員)
その他の愛知職域コホート研究関連論文

(4) 追跡研究で明らかになったメタボリックシンドローム予防に繋がる食事パターン(再掲)(PDF, 2022)

2. 糖尿病 関連論文
(1) 血中アディポネクチンの濃度と2型糖尿病発症率の関連
(2) 血中炎症マーカーの値と糖尿病発症リスクの関連(PDF, 2013)
(3) 喫煙と糖尿病発症リスクの関連(PDF, 2015)
(4) 糖尿病家族歴と2型糖尿病発症リスクの関連(PDF, 2015)
(5) 朝食欠食と2型糖尿病発症リスクの関連(PDF, 2015)
(6) 若年期からの体重変化・体重変動と2型糖尿病発症リスクの関連(PDF, 2015)
(7) 10年間に2型糖尿病を発症する確率を予測するシステム開発 (PDF, 2018)
(8) 肝機能障害と2型糖尿病発症の関連について (PDF, 2019)
(10) 収縮期血圧の長期変動と2型糖尿病発症の関連について(PDF, 2022)

3. 喫煙 関連論文
(1) 喫煙と心臓病・脳卒中の関連性
(2) 喫煙は血中アディポネクチンを低下させる
(3) 喫煙と糖尿病
(4) 喫煙と糖尿病発症リスクの関連(PDF, 2015, 再掲)
(5) 喫煙は脂肪肝のリスクになる(PDF、2020)(2020/3/24掲載)

4. 健康習慣 関連論文
(1) 7つの健康習慣とは
(2) 健康習慣と健康度との関連
(3) 健康習慣と白血球数との関連
(4) 循環器病予防のための5つの食事指標と健診成績との関連(PDF)

5. 食事 関連論文
(1) 食べる速さと肥満
(2) 塩分の好みと高血圧
(3) αリノレン酸の摂取によるインスリン抵抗性予防的効果
(4) 食習慣と5年後のメタボリックシンドロームの発症
(5)コーヒー摂取による生活習慣病予防効果のメカニズム
(6) 循環器病予防のための5つの食事指標と健診成績との関連(PDF、再掲)
(7) 朝食欠食と2型糖尿病発症リスクの関連(PDF, 2015, 再掲)
(8) 追跡研究で明らかになったメタボリックシンドローム予防に繋がる食事パターン(再掲)(PDF, 2022)

6. ストレス 関連論文
(1) 仕事ストレスのチェック
(2) 仕事ストレスの多寡とストレスの自覚の関係
(3) ストレスと不眠
(4) ストレスと生活習慣
(5) 5年間のストレス自覚、食習慣が肥満度の増加量に及ぼす影響
(6) ストレス自覚と体型が血圧に及ぼす影響―5年間の追跡結果より―(PDF)

7. トピック
(1) 低炎症状態と生活習慣病
(2) 生活習慣病の家族歴について
(3) 出生体重と成人期の高血圧~胎児起源説~
(4) 栄養素摂取と不眠(PDF)
(5) 脂肪肝とインスリン抵抗性(PDF)
(6) 喫煙は脂肪肝のリスクになる(PDF、2020、再掲)
(7) 中年期の高血糖は退職後の認知機能低下と関連 (PDF、2021、再掲) (2021/6/29掲載)

8. 心血管疾患
(4) 交絡

はじめに

この研究は、大都市圏に居住する勤労者の方々を対象として、日常の生活習慣や毎年の定期健康診断成績が、その後の病気発生とどのように、さらにはどれほどの強さで関係しているのかを見極め、その病気の発生を予防する手段を見つけようという目的で平成9年に発足しました。

心筋梗塞による死亡率が高い欧米諸国では、心筋梗塞に罹らないための方策を見つける目的で、第2次世界大戦終了直後からこのような研究を開始しました。心筋梗塞にかかっていない数千人の地域住民に対して健診を行い、生活習慣を知り、追跡を開始しました。 10年ないし20年経って、その間に心筋梗塞に罹った人々と罹らなかった人々の間で追跡開始前のデータを比較した結果、喫煙、血液中のコレステロール濃度が高いこと、血圧の高いことが三大危険因子として浮かび上がってきました。そして研究が進むにつれ、更に多くの要因が明らかにされてきました。これらの研究結果をもとに米国では国民自らこれら要因を減らす運動を進めてきた結果、心筋梗塞の死亡率は着実に減ってきました。

日本では昭和30年代まで高い死亡率を示した脳卒中への対策として、高血圧治療や減塩運動がなされ、年齢調整死亡率は最も高い頃の 5分の1から6分の1 にまで減少しました。このように多くの病気は、生活習慣を変えることによって予防効果がもたらされる事は既に明らかです。しかし、長寿時代の今、生活習慣の何をどのように変える事が最も有効でしょうか。

脳卒中の死亡率が減少した現在、代わってがんや心臓病の死亡率が増加しつつあり、更には、絶対数としては少ないのですが、自殺率が急上昇しているなど(注:平成15年をピークに減少傾向にありましたが、コロナ禍においてその傾向が変化したことが指摘されています。2023年4月追記)、国民の健康上問題となる病気は移り変わります。現在、先進国あるいは途上国を問わず肥満者の増加が世界の多くの国々での共通の脅威になりつつあります。肥満は心筋梗塞のほか、糖尿病、高血圧、ある種のがん、筋骨格系の異常など多くの生活習慣病に共通する重要な発病要因であるからです。肥満をもたらす要因の一つとして精神的ストレスも関わっているかもしれません。これらの健康障害に対して適切な対応をとるためには、病気の現状を絶えず把握することが大切で、この集団は現状を写す鏡の役割も担っています。また、病気の新規発生だけでなく、悪化を予防したり、病気を抱えた方の就労を支援することに繋がる知見の重要性も益々認識されてきています。

さらにこの研究では、平成9年、平成14年、平成25年、平成30年の健診時余剰血液を保存させて頂いて、この保存血液を用いて、新たに発見されたり、新たにその役割が解明されたりした物質の濃度を測定し、生活習慣病の発生とどのような関連性を有しているかについても検討してきております(令和6年にも新規保存を実施予定です)。なお、生活習慣病の発生に関係している生活習慣や検査成績を明らかにするためには、生活習慣病を発病された方々と健康のまま過ごされた方々の間で、これらの成績および資料を比較検討することが重要で、生活習慣病に罹られたかどうかの調査をご退職された方へも含め、定期的に実施してきております。これらの解析を通して、生活習慣病の予防に役立てられるような知見が得られることを願い、努力を続ける所存であります。